防衛機制(Defense Mechanism)の4分類

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防衛機制とは

防衛機制(Defense Mechanism)は、精神分析における概念であり、ジークムント・フロイトによって提唱されました。

防衛機制とは、自我(エゴ)が外部からのストレスや内的な葛藤から自分を守るために無意識的に行う心理的なプロセスです。これにより、個人は精神的な安定を保つことができます。

ハーバード大学教授ジョージ・E・ヴァイラントは、防衛機制を人のこころの成熟度により分類できるとしています。

ヴァイラントは、防衛機制を以下の4つのカテゴリーに分類しました。

  1. 精神病的防衛機制(pathological defences)
  2. 未熟な防衛機制(immature defences)
  3. 神経症的防衛機制(neurotic defences)
  4. 成熟した防衛機制(mature defences )

防衛機制のみで人の成熟度を測ることはできません。

ですが、どの段階の防衛機制をどれくらいの頻度で用いているかによって、ある程度の指標にすることができます。

それではそれぞれの防衛機制についてご紹介していきます。

1. 精神病的防衛機制

精神病的防衛機制は、現実を歪めることで不安を軽減しようとするメカニズムです。これらの防衛機制は、精神病的な症状を呈することが多いです。最も原始的な年齢が5歳以前の子どもに多く見られます。自己愛的防衛( Narcissistic defences)とも言われています。

転換(Conversion): 抑圧された衝動や葛藤が、麻痺や感覚喪失となって表現されることがあります。手足が痺れたり、失立失歩(脱力し立ったり歩けなくなる)、声が出なくなる失声症や視野が狭くなる、嚥下困難、不食や嘔吐などの症状が出る場合があります。

否認 (Denial): 不快な現実を認めず、存在しないかのように振る舞うことです。例えば、重大な病気の診断を受けた人が、その事実を完全に否定することがあります。

代替(Compensation): 個人が自己の欠点や不足を補おうとすることです。適度に行われる場合には健全な防衛機制となりますが、過度に頼ることは問題を引き起こす可能性があります。例えば、他者への優越感や物質的な成功、能力の向上を過度に追求することで自己評価を高めようとしたりします。

歪曲 (Distortion): 現実を自分に都合の良い形に歪めることです。例えば、自分の失敗を他人のせいにすることがあります。

投影 (Projection): 自分の受け入れがたい感情や欲望を他人に転嫁することです。例えば、自分が他人を嫌っているのに、他人が自分を嫌っていると感じることがあります。

分裂 (Splitting): 物事を極端に良いか悪いかのどちらかで捉えることです。例えば、ある人を完全に理想化する一方で、別の人を完全に悪とみなすことがあります。


躁的防衛(Manic defence)
: 自分の大切な対象を失ったり、傷つけたりしてしまったと感じた時に生じる不快な感情(不安や抑うつなど)を意識しなくてもいいようにするために行います。「優越感(征服感)」「支配感」「軽蔑感」などの感情に特徴づけられます。

2. 未熟な防衛機制

未熟な防衛機制は、子どもや未熟な成人がよく使用するメカニズムで、現実逃避や自己中心的な行動が特徴です。成人に見られることもありますが、3歳〜15歳に多く見られる防衛機制です。

退行 (Regression): より幼い発達段階に戻ることです。例えば、ストレスを感じたときに子供のように振る舞うことがあります。

空想 (Fantasy): 現実から逃避して空想の世界に浸ることです。例えば、困難な状況に直面したときに、理想的な未来を夢見ることがあります。

受動攻撃 (Passive Aggression): 直接的に攻撃するのではなく、間接的に不満を表現することです。例えば、故意に遅刻することで他人に対する不満を示すことがあります。

行動化 (Acting Out): 抑圧された感情や欲望を行動で表現することです。例えば、怒りを感じたときに物を壊すことがあります。

3. 神経症的防衛機制

神経症的防衛機制は、現実をある程度受け入れながらも、不安を軽減するためのメカニズムです。これらの防衛機制は、一般的に健康な成人が使用しますが、過度に使用すると問題を引き起こすことがあります。

抑圧 (Repression): 不快な記憶や感情を無意識に追いやることです。例えば、トラウマ的な出来事を忘れることがあります。

反動形成 (Reaction Formation): 自分の本当の感情を隠すために、逆の行動を取ることです。例えば、嫌いな人に対して過剰に親切にすることがあります。

合理化 (Rationalization): 自分の行動や感情を合理的に説明することです。例えば、失敗を他人のせいにすることで、自分を正当化することがあります。

置き換え (Displacement): 本来の対象に対する感情を別の対象に向けることです。例えば、上司に対する怒りを家族にぶつけることがあります。

4. 成熟した防衛機制

成熟した防衛機制は、現実を受け入れつつ、建設的に対処するためのメカニズムです。これらの防衛機制は、精神的に健康な成人がよく使用します。年齢としては12歳以降で用いられる防衛機制です。

昇華 (Sublimation): 社会的に受け入れられない欲望や衝動を、建設的な行動に変えることです。例えば、攻撃的な衝動をスポーツに向けることがあります。

ユーモア (Humor): 困難な状況を笑い飛ばすことで、ストレスを軽減することです。例えば、失敗をジョークにすることがあります。

抑制 (Suppression): 意識的に不快な感情や思考を抑えることです。例えば、仕事中に個人的な問題を考えないようにすることがあります。

知性化 (Intellectualization): 感情的な問題を理論的に分析することで、感情を抑えることです。例えば、失恋を心理学的に分析することがあります。

先取り(Anticipation):将来を見越して先に対策を打っておくことで問題が悪化することを防ぐことができます。例えば、「どこかで失敗するものだろう」と予め考えておくなどです。

まとめ

防衛機制は、私たちが日常生活で直面するさまざまなストレスや不安に対処するための重要なツールです。しかし、これらのメカニズムを過度に使用すると、逆に問題を引き起こすことがあります。バランスを保ちながら、適切に防衛機制を活用することが重要です。

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