デフォルトモードネットワーク(Default Mode Network, DMN)は、脳が安静状態にあるときに活性化する神経ネットワークです。以下に、DMNの詳細について説明します。
デフォルトモードネットワークとは
デフォルトモードネットワーク(DMN)は、脳が特定のタスクに集中していないとき(無意識下)、つまり「ぼんやりしているとき」や「何もしていないとき」に活性化する神経回路です。脳が完全に休んでしまうと、突然の危機に反応しづらいため、DMNは待機状態にして万が一に備えています。
DMNは、内側前頭前野(MPFC)、後部帯状回(PCC)、楔前部(Precuneus)、下部頭頂葉(IPL)、外側側頭葉(LTC)、海馬体(HF)などの脳部位で構成されています。
DMNが活性化すると、脳内の情報が整理され、創造力が高まる一方で、過剰な活性化は注意力の散漫や不安感の増加、脳疲労を引き起こすことがあります。
最近の研究では、何もせずぼーっとしている状態がずっと続くと、むしろ脳が疲れやすくなると考えられています。DMNが活性化しているとき、脳では60~80%のエネルギーが使用されているともいわれます。そのため「体は休まっているけど脳の疲れは取れない」という状態に陥りやすくなります。
DMNが活性化していると、様々なアイデアが入ってくる反面、余計な情報も生み出されやすいです。そのため何もしないでいると、どうでもいいことを考えてしまったり、不安が強まることがあります。
そんなときはぼーっとするよりも何かに集中する時間を確保するほうがいいそうです。軽い作業や瞑想、散歩が効果的だと言われています。

ストレスのある時はぼーっとするのが1番とよく言われていますが…状況によるということですね。
過度にぼーっとしすぎるのも疲れの原因になるようです。
DMNの役割
デフォルトモードネットワーク(Default Mode Network, DMN)は、脳が特定の外部タスクに集中していないときに活性化する神経ネットワークです。以下に、DMNの役割について詳しく説明します。
1. 自己参照的思考
DMNは、自己参照的思考に関与しています。これは、自分自身について考えるときや、過去の出来事を振り返るときに活性化することを意味します。例えば、自己評価や自己認識、将来の計画を立てる際にDMNが重要な役割を果たします。
2. 社会的認知
DMNは、他者の意図や感情を理解するための社会的認知にも関与しています。これは、他者の視点を理解し、共感する能力に関連しています。例えば、他者の行動を予測したり、他者の感情を読み取る際にDMNが活性化します。
3. 記憶の統合
DMNは、記憶の統合にも重要な役割を果たします。これは、日常生活で得た情報を整理し、長期記憶として保存するプロセスです。特に、エピソード記憶(個人的な経験や出来事の記憶)の統合に関与しています。
4. 創造性と問題解決
DMNは、創造的な思考や問題解決にも関与しています。これは、既存の情報を新しい方法で組み合わせたり、新しいアイデアを生み出す能力に関連しています。例えば、創造的なアイデアを思いつく際や、複雑な問題を解決する際にDMNが活性化します。
5. 内的な自己対話
DMNは、内的な自己対話にも関与しています。これは、自分自身との対話や内省的な思考を指します。例えば、自己反省や自己評価を行う際にDMNが活性化します。
6. 未来のシミュレーション
DMNは、未来のシミュレーションにも関与しています。これは、将来の出来事や状況を予測し、シミュレーションする能力に関連しています。例えば、将来の計画を立てる際や、将来の出来事を予測する際にDMNが活性化します。
7. 感情の調整
DMNは、感情の調整にも関与しています。これは、感情の認識や調整、制御に関連しています。例えば、ストレスや不安を感じた際に、感情を調整するためにDMNが活性化します。
8. 自己意識の形成
DMNは、自己意識の形成にも重要な役割を果たします。これは、自分自身の存在やアイデンティティを認識する能力に関連しています。例えば、自分自身の価値観や信念を形成する際にDMNが活性化します。
9. 休息とリラクゼーション
DMNは、休息やリラクゼーション時にも活性化します。これは、脳が外部のタスクから解放され、内的な思考や感情に集中する時間を提供します。例えば、瞑想や散歩、リラックスしているときにDMNが活性化します。
10. 精神疾患との関連
DMNの異常な活動は、いくつかの精神疾患と関連しています。例えば、うつ病や統合失調症、自閉症スペクトラム障害などです。これらの疾患では、DMNの過剰な活性化や不適切な調整が観察されることがあります。
DMNの研究と臨床応用
近年の研究では、DMNの異常が認知症やうつ病などの精神疾患と関連していることが示されています。また、DMNの活動を調整することで、これらの疾患の治療に役立つ可能性があるとされています。
DMNを不活性化する方法
以下に、DMNを不活性化するための具体的な方法を紹介します。
1. 集中瞑想
集中瞑想は、特定の対象に意識を集中させる瞑想法です。以下の手順で行います:
- 調身:背筋を伸ばし、リラックスした姿勢を保ちます。
- 調息:5秒かけて息を吸い、10~15秒かけて吐きます。
- 調心:呼吸や身体の一部に意識を集中させます。
2. 歩行瞑想
歩行瞑想は、歩きながら瞑想を行う方法です。以下の手順で行います:
- 歩くことに意識を集中させ、足の感覚や動きに注意を向けます。
- 一歩一歩をゆっくりと踏みしめるように歩きます。
3. 食事瞑想
食事瞑想は、食事をしながら瞑想を行う方法です。以下の手順で行います:
- 食べ物の味や食感に意識を集中させます。
- 一口ごとにゆっくりと噛みしめ、食べ物の風味を楽しみます。
4. 雑念のコントロール
雑念をコントロールすることで、DMNを不活性化します。以下の手順で行います:
- 雑念が浮かんできたら、それを観察し、受け入れます。
- 雑念にとらわれず、再び集中する対象に意識を戻します。
DMNのバランスを取る方法
DMNの活性化と不活性化のバランスを取ることが重要です。以下の方法でバランスを取ることができます:
- 定期的な瞑想:観察瞑想と集中瞑想を交互に行うことで、DMNのバランスを取ります。
- 適度な運動:運動をすることで、DMNの活性化と不活性化のバランスを取ります。
- デジタルデトックス:定期的にデジタル機器から離れることで、脳をリフレッシュさせます。
まとめ
デフォルトモードネットワーク(DMN)は、脳が安静状態にあるときに活性化する神経ネットワークであり、情報の整理や自己参照的思考、創造性の向上などの役割を果たしています。DMNの活動を適切に調整することで、精神的な健康を維持し、創造力を高めることができます。