躁的防衛(manic defense)と抑うつポジション(depressive position)

躁的防衛(manic defense)とは、精神分析学の概念で、精神的苦痛から逃れるために現実を否定し、自分の都合のよいように解釈する防衛機制の一種です。この概念は、メラニー・クラインによって提唱されました。

目次

躁的防衛の発生メカニズム

クラインは、抑うつポジションで抑うつ不安が克服されていくことが精神のさらなる健康的な発達をもたらすと考えました。

しかし、このプロセスにおいて抑うつ不安のもたらす抑うつ感情や罪悪感から生じる心の痛みに個人が耐えきれない場合があります。そういった場合、その不安と苦痛を排除する防衛メカニズムが活性化されます。その代表的なものが躁的防衛です。

万能感、対象へのコントロール、脱価値化(軽蔑感)、対象への勝利感、征服感といった心的活動や情緒から成り立っています。

この抑うつポジションの発達が不十分な場合、成人期においても対人関係における問題が生じることがあります。

抑うつポジション(depressive position)とは

メラニー・クラインの抑うつポジション(depressive position)は、子どもの心理的発達において重要な役割を果たす概念です。

抑うつポジションは、乳幼児が成長する過程で経験する心理的な状態を指し、特に3ヶ月から2歳頃までの期間に見られます。このポジションは、子どもが自分と他者との関係をどのように理解し、感じるかに大きな影響を与えます。

このポジションを通じて、子どもは自分の攻撃的な衝動を理解し、他者との関係を修復する能力を身につけます。(共感や思いやり)

また、抑うつポジションの発達が不十分な場合、成人期においても対人関係における問題が生じることがあります。

抑うつポジションの概要

抑うつポジションとは、子どもが自分の攻撃的な衝動や欲求が他者に与える影響を認識し、その結果として罪悪感や悲しみを感じる状態を指します。この時期に子どもは、母親や他の重要な他者が自分にとって「良い」存在であると同時に「悪い」存在でもあることを理解し始めます。これにより、部分対象関係から全体対象関係への移行が進みます。

妄想分裂ポジションとの対比

抑うつポジションは、妄想分裂ポジション(paranoid-schizoid position)と対比されます。妄想分裂ポジションは、乳児が自分の欲求が満たされるかどうかによって他者を「良い」か「悪い」と極端に分ける状態を指します。この時期には、乳児は自分の攻撃的な衝動を外部に投影し、他者を迫害者として認識することが多いです。

抑うつポジションの発達過程

抑うつポジションの発達は、子どもが自分の攻撃的な衝動が他者に与える影響を理解し始めることから始まります。これにより、子どもは罪悪感や悲しみを感じるようになります。この過程で、子どもは自分の攻撃的な衝動を抑制し、他者との関係を修復しようとする努力を始めます。

抑うつポジションの心理的影響

抑うつポジションは、子どもの心理的発達において重要な役割を果たします。この時期に子どもは、他者との関係をより現実的に理解し、共感や思いやりの感情を育むことができます。また、抑うつポジションを通じて、子どもは自分の攻撃的な衝動をコントロールし、他者との関係を修復する能力を身につけます。

抑うつポジションの臨床的意義

抑うつポジションは、臨床心理学においても重要な概念です。クラインは、抑うつポジションが精神病理の理解と治療において重要であると考えました。特に、抑うつポジションの発達が不十分な場合、成人期においても対人関係における問題が生じることがあります。

抑うつポジションの治療的アプローチ

抑うつポジションの治療には、患者が自分の攻撃的な衝動や罪悪感を認識し、それを受け入れることが重要です。治療者は、患者が自分の感情を表現し、他者との関係を修復する手助けをします。また、患者が自分の攻撃的な衝動をコントロールし、他者との関係をより現実的に理解することを促します。

躁的防衛の特徴

躁的防衛は、万能感、対象へのコントロール、脱価値化(軽蔑感)、対象への勝利感、征服感といった心的活動や情緒から成り立っています。

それにより、自分が内的な世界をもっていることや、その世界に自分が大切に思う対象が含まれているという自覚をせずに済みます。

そして乳児はサディスティックで爽快な感情などの自分にとって都合のいい空想に浸ることになります。

短期間の場合

短期的な例では、不慣れな環境で心の奥では緊張や不安や居心地の悪さを抱えているけれど、まったくそういった負の気持ちがないかのように、ハイテンションで振舞うケースが代表例です。例えば、思春期の人間関係や新しい環境を迎えたときなどが挙げられます。

長期間の場合

長期的に抑圧をし続けると、他の無意識や心理疾患と関連していくことがあります。例えば、うつ病やパニック障害などとして反動が大きく出てしまうことに繋がります。

理論の変遷

この概念を初めて提示したときにクラインは、躁的防衛と並列して、躁的メカニズム、躁的ポジションについて述べました。しかし、1940年以降には躁的ポジションや強迫ポジションという用語は放棄され、躁的防衛についてもその病理が明らかに示されるようになりました。

対処法

当時の自分を理解する: 自分がどのような状況で躁的防衛を使っていたのかを振り返ることが重要です。日頃から日記などを書いて定期的に読み返すことが効果的です。

生活リズムをチェックする: 規則正しい生活を心がけることで、心身のバランスを保つことができます。

人に話す: 信頼できる人に自分の気持ちを話すことで、心の負担を軽減することができます。

まとめ

躁的防衛(manic defense)とは、精神分析学の概念で、精神的苦痛から逃れるために現実を否定し、自分の都合のよいように解釈する防衛機制の一種です。

万能感、対象へのコントロール、脱価値化(軽蔑感)、対象への勝利感、征服感といった心的活動や情緒から成り立っています。

子どもは、抑うつポジションを通じて上記のような自分の攻撃的な衝動(躁的防衛)を理解し、他者との関係を修復する能力を身につけます。(共感や思いやり)

この抑うつポジションの発達が不十分な場合、成人期においても対人関係における問題が生じることがあります。

躁的防衛は、短期間では適切な反応として見受けられることが多いですが、長期的に抑圧をし続けると他の無意識や心理疾患と関連していくことがあります。

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