依存性パーソナリティ障害(Dependent Personality Disorder, DPD)とは

依存性パーソナリティ障害(Dependent Personality Disorder, DPD)は、他者への心理的依存が強く、何事も一人ではできないという広範で持続的な様式を持つパーソナリティ障害です。

この障害を持つ人は、他者からの保護がなければ生きられないという否定的な認知を持ち、他者を満たすことで保護を引き出し、自分の人生に対する主体的な責任を逃れようとします。

目次

症状

依存性パーソナリティ障害の主な症状には以下のようなものがあります:

・日常の小さなことでも一人で決められない

・一人では不安で行動ができない

・誰かに保護して面倒をみてもらいたいという欲求が強い

・嫌われるのが怖くて過度に周囲と同調してしまう

・自分の心身を犠牲にしてでも誰かに尽くしてしまう

・家族や恋人や友人に見捨てられたらという不安がつきまとう

・一人になることを極端に恐れる

原因

依存性パーソナリティ障害の原因は完全には解明されていませんが、以下のような因子が関与していると考えられています:

・文化的因子

・幼児期の否定的な体験

・不安になりやすい先天的傾向

・家族内で受け継がれる特性(服従性、自信のなさ、控えめな行動など)

依存性パーソナリティ障害の診断基準

依存性パーソナリティ障害(Dependent Personality Disorder, DPD)は、他者への過度な依存と自己決定の困難さを特徴とするパーソナリティ障害です。以下に、診断基準について詳しく説明します。

DSM-5による診断基準

アメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)」では、依存性パーソナリティ障害の診断基準として以下の項目が挙げられています。

これらのうち、少なくとも5つ以上を満たす必要があります。

日常的な判断において他者からの過剰な助言や安心を必要とする :

  • 例えば、服装や食事の選択など、日常的な決定においても他者の意見を求めることが多い。

生活の重要な側面について他者に責任を負ってもらうことを望む :

  • 例えば、仕事や家庭の重要な決定を他者に任せることが多い。

支援や承認を失うことを恐れるため、他者との意見の不一致を避ける :

  • 自分の意見を主張することが難しく、他者の意見に従うことが多い。

自分の判断力や能力に自信がないため、一人で計画を始めることが困難 :

  • 例えば、新しいプロジェクトや活動を始める際に、他者の助けを必要とする。

他者からの支援を得るために、進んで多大な労力を払う :

  • 例えば、不快な課題や仕事を引き受けることが多い。

一人でいるときに居心地悪く感じたり、無力感を覚えたりする :

  • 一人でいることが不安で、他者と一緒にいることを強く望む。

親密な関係が終わったときに、新たな関係を築く差し迫った必要性を感じる :

  • 例えば、恋人や友人との関係が終わった後、すぐに新しい関係を求める。

一人にされて自分の面倒をみることになる恐れにとりつかれている :

  • 自分一人では生活できないという強い不安を感じる。

ICD-10による診断基準

世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類第10版(ICD-10)」でも、依存性パーソナリティ障害の診断基準が定められています。

以下の項目のうち、少なくとも3つ以上を満たす必要があります。

他者からの助言や安心を過剰に求める :

  • 例えば、日常的な決定においても他者の意見を求めることが多い。

重要な決定を他者に任せる :

  • 例えば、仕事や家庭の重要な決定を他者に任せることが多い。

意見の不一致を避けるために他者に従う :

  • 自分の意見を主張することが難しく、他者の意見に従うことが多い。

新しい計画を始める際に他者の助けを必要とす る :

  • 例えば、新しいプロジェクトや活動を始める際に、他者の助けを必要とする。

不快な課題や仕事を引き受けることが多い :

  • 他者からの支援を得るために、進んで多大な労力を払う。

一人でいることが不安で、他者と一緒にいることを強く望む :

  • 一人でいるときに居心地悪く感じたり、無力感を覚えたりする。

親密な関係が終わった後、すぐに新しい関係を求める :

  • 例えば、恋人や友人との関係が終わった後、すぐに新しい関係を求める。

診断のプロセス

依存性パーソナリティ障害の診断は、臨床心理士や精神科医によって行われます。診断のプロセスには以下のステップが含まれます:

初回面接 :

  • 患者の症状や生活状況について詳しく話を聞きます。

心理検査 :

  • パーソナリティ障害の診断に役立つ心理検査を実施します。

診断基準の確認 :

  • DSM-5やICD-10の診断基準に基づいて、患者の症状がどの程度一致しているかを確認します。

他の障害との鑑別 :

  • 他のパーソナリティ障害や精神疾患との鑑別診断を行います。

診断の重要性

依存性パーソナリティ障害の診断は、適切な治療とサポートを提供するために重要です。診断が確定した場合、以下のような治療法が考えられます:

認知行動療法(CBT):

  • 自立への恐れと自己主張することの困難さを検討することに焦点を当てます。

精神力動的精神療法 :

  • 自立への恐れを検討することに焦点を当てた治療法です。

薬物療法 :

  • 抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など)が抑うつと不安の治療に使用されることがあります。

依存性パーソナリティ障害は、本人や周囲が困っている場合に治療が必要となります。適切な治療とサポートを受けることで、症状の改善が期待できます。

周囲の方の接し方

依存性パーソナリティ障害の方と接する際には、以下のポイントに注意することが重要です:

・本人の欲求を理解し、尊重する

・自分の欲求を抑えることが大切

・過度に依存させないようにする

・自立を促すサポートを行う

まとめ

依存性パーソナリティ障害は、本人や周囲が困っている場合に治療が必要となります。適切な治療とサポートを受けることで、症状の改善が期待できます。

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