回避性パーソナリティ障害(Avoidant Personality Disorder, APD)とは

回避性パーソナリティ障害(Avoidant Personality Disorder, APD)は、対人関係や社会的状況を避ける傾向が強く、自己評価が低いことが特徴の一つです。

以下に、回避性パーソナリティ障害について詳しく説明します。

目次

特徴

対人関係の回避 :

批判や拒絶を恐れるため、対人関係を避ける傾向があります。自分が好かれていると確信できない限り、他人と関わることを避けます。

自己評価の低さ :

自分を社会的に不適格で魅力に欠けると感じ、他人からの否定的な評価を極端に恐れます。

社会的抑制 :

社会的な場面で引っ込み思案であり、親密な関係を築くことに対してためらいがあります。

過敏さ :

批判や拒絶に対して非常に敏感であり、そのために新しい活動やリスクを避ける傾向があります。

原因

回避性パーソナリティ障害の原因は明確には分かっていませんが、以下の要因が関与していると考えられています:

遺伝的要因: 家族内での発症率が高いことから、遺伝的な要因が関与している可能性があります。

環境要因: 幼少期の虐待や過度な批判、いじめなどが影響していると考えられています。

心理的要因: 自己評価の低さや不安感が強いことが影響しています。

回避性パーソナリティ障害(Avoidant Personality Disorder, APD)の診断基準について詳しく説明します。

診断基準の概要

回避性パーソナリティ障害は、対人関係や社会的状況を避ける傾向が強く、自己評価が低いことが特徴です。

診断基準は、主にアメリカ精神医学会のDSM-5と世界保健機関(WHO)のICD-10に基づいています。

DSM-5による診断基準

DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)によると、回避性パーソナリティ障害は以下の基準に基づいて診断されます:

社会的抑制、不全感、および否定的評価に対する過敏性の広範な様式が成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになります。

以下のうち4つ(またはそれ以上)によって示されます:

・批判、非難、または拒絶に対する恐怖のために、重要な対人接触のある職業を避ける。

・自分が好かれていると確信できなければ、人と関係をもちたがらない。

・恥をかかされる、または嘲笑されることを恐れるために、親密な関係の中でも遠慮を示す。

・社会的な状況では、批判される、または拒絶されることに心がとらわれている。

・不全感のために、新しい対人関係状況で抑制がおこる。

・自分は社会的に不適切である、人間として長所がない、またはほかの人より劣っていると思っている。

・恥ずかしいことになるかもしれないという理由で、個人的な危険をおかすこと、または何か新しい活動に取りかかることに、異常なほど引っ込み思案である。

ICD-10による診断基準

ICD-10(International Classification of Diseases, 10th Revision)によると、回避性パーソナリティ障害は以下の基準に基づいて診断されます:

持続的ですべてにわたる緊張と心配の感情

自分が社会的に不適格である、人柄に魅力がない、あるいは他人に劣っているという確信

社会的場面で批判されたり拒否されたりすることについての過度のとらわれ

好かれていると確信できなければ人と関わることに乗り気でない

身体的な安全への欲求からライフスタイルに制限を加える、または、批判、非難あるいは拒絶をおそれて重要な対人的接触を伴う社会的あるいは職業的活動を回避する

診断基準の共通点と相違点

DSM-5とICD-10の診断基準には多くの共通点がありますが、いくつかの相違点も存在します。

共通点

他人からの非難・批判・拒絶に対する強い恐怖があり、対人や社会活動を避ける。

対人や社会活動を避けないまでも、常に相手からの評価を気にしている

絶対に好かれていると確信が無ければ人と関わることを避ける

恥や傷つきを恐れ、ライフスタイルに制限を加える

自分は社会的に劣っていて価値の無い人間だと思いこんでいる

相違点

・ICD-10では、全般的な不安や緊張の強さを項目として重視しています。

・DSM-5では、社会的抑制や不全感に対する過敏性が強調されています。

診断の実際

診断基準を用いる際には、以下の点に注意が必要です:

患者の訴え: 心の病気は検査数値や外観からはわからないことが多く、患者の訴えが重要です。

診断のばらつき: 診断基準を用いることで、診断や治療のばらつきを減らすことができます。

鑑別診断: 他の精神疾患との鑑別が必要です。例えば、社交恐怖症やシゾイドパーソナリティ障害との違いを見極めることが重要です。

治療

回避性パーソナリティ障害の治療には、以下の方法が用いられます:

認知行動療法(CBT): 否定的な思考パターンを変えるための治療法です。

ソーシャルスキルトレーニング: 社会的なスキルを向上させるためのトレーニングです。

薬物療法: 抗不安薬や抗うつ薬が使用されることがあります。

併存症

回避性パーソナリティ障害は、他の精神疾患と併存することが多いです:

不安障害: パニック障害や社会不安障害など。

うつ病: 抑うつ状態が併存することが多いです。

強迫性障害: 強迫的な思考や行動が見られることがあります。

まとめ

回避性パーソナリティ障害は、対人関係や社会的状況を避ける傾向が強く、自己評価が低いことが特徴です。

治療には認知行動療法やソーシャルスキルトレーニング、薬物療法が用いられます。早期の診断と適切な治療が重要です。

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