演技性パーソナリティ障害(Histrionic Personality Disorder, HPD)とは
演技性パーソナリティ障害(Histrionic Personality Disorder, HPD)は、他者からの注目や承認を強く求めるパーソナリティ障害の一種です。
この障害を持つ人は、注目を集めるために大げさな行動や言動をとることが特徴です。

特徴と症状
演技性パーソナリティ障害の主な特徴と症状は以下の通りです:
注目の的でないと不快:
自分が注目されていないと楽しくないと感じる。
誘惑的・挑発的な行動:
他者との交流が過度に誘惑的または挑発的になる。
浅薄で変わりやすい情動:
感情が浅く、すぐに変わる。
身体的外見を利用:
注目を集めるために身体的外見を一貫して利用する。
過度に印象的な話し方:
内容が乏しいが、印象的な話し方をする。
自己演劇化:
芝居がかった態度や誇張した情動表現をする。
被暗示的:
他者や環境の影響を受けやすい。
対人関係の誤解:
対人関係を実際以上に親密なものと誤解する。
診断基準
演技性パーソナリティ障害の診断は、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)に基づいて行われます。以下の8つの基準のうち、5つ以上を満たす場合に診断されます:
・自分が注目の的でないと楽しくない
・他者との交流が誘惑的または挑発的になる
・浅薄で変わりやすい情動の表出
・自分の関心を引くために身体的外見を一貫して用いる
・過度に印象的だが内容のない話し方をする
・自己演劇化、芝居がかった態度、誇張した情動表現
・被暗示的(他者や環境の影響を受けやすい)
・対人関係を実際以上に親密なものと思っている
原因とメカニズム
演技性パーソナリティ障害の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています:
遺伝的要因:
家族に同様の障害を持つ人がいる場合、発症リスクが高まる。
環境要因:
幼少期の家庭環境や親子関係が影響することがある。
心理的要因:
自己評価の低さや承認欲求の強さが関与する。
鑑別疾患と併存症
演技性パーソナリティ障害は、他のパーソナリティ障害や精神疾患と併存することが多いです。主な鑑別疾患と併存症は以下の通りです:
ADHD:
衝動性や感情の変動が共通している。
双極性障害:
気分の変動が共通している。
うつ病:
不承認時のストレスが影響する。
社会不安障害:
不承認への恐れからの不安が背景にある。
依存症:
SNSなどへの依存が目立つ。
治療法
演技性パーソナリティ障害の治療は、主に精神療法と薬物療法が用いられます:
精神療法:
認知行動療法(CBT)や対人関係療法(IPT)が効果的とされています。これにより、自己評価の改善や対人関係のスキル向上が図られます。
薬物療法:
抑うつ症状や不安症状がある場合、抗うつ薬や抗不安薬が使用されることがあります。
現代社会との関係
現代社会では、SNSの普及により「承認欲求」が強く影響を及ぼすことがあります。
演技性パーソナリティ障害の特性がSNSでのフォロワー獲得や影響力の向上に結びつくことがありますが、過度になると自他に悪影響を及ぼすリスクもあります。
まとめ
演技性パーソナリティ障害は、他者からの注目や承認を強く求めるパーソナリティ障害であり、その特徴や症状、診断基準、原因、治療法について理解することが重要です。
適切な治療とサポートにより、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。