パーソナリティ障害とは
パーソナリティ障害(人格障害)とは、個人の認知、感情、対人関係、衝動制御などのパターンが持続的に偏っているため、社会生活や人間関係において著しい困難を引き起こす精神障害です。
本人はなぜそうなってしまうのかわからないまま生きづらさを感じるようになります。ですが原因がわからないため、性格がそうだから仕方ないと受け入れるようになります。
これらのパターンは、青年期(思春期)または成人期初期に始まり、長期間にわたって持続します。
パーソナリティ障害には数タイプあり、タイプによっては治療をせずとも年齢とともに問題行動は少しずつ治まっていきます。
適切な精神療法と家族や周囲の人達の接し方によって改善できるものです。
周囲とトラブルがあったとしても、本人が不自由を感じていなければ障害とはいえないのです。
治療を適切に行うためには、「治りたい」という受け身の姿勢ではなく自分の力で「治したい」と強く願い、自己と向き合っていく強さが必要になります。
パーソナリティ障害で辛い思いをしており、誰かに責任を押しつけたり、助けてほしいと思っていたとしても、パーソナリティ障害を治すのは医師でも家族でもなく自分にしか解消できません。
そのことに本人が気づき、「治したい」と強く思って初めて回復に近づいていけます。
パーソナリティ障害の種類
パーソナリティ障害は、主に以下の3つの群に分類されます:
A群パーソナリティ障害(奇妙で風変わりな行動)
妄想性パーソナリティ障害 :
他人に対する強い不信感や猜疑心を持ち、他者の行動を悪意的に解釈する傾向があります。

シゾイドパーソナリティ障害 :
社会的な関係を避け、孤立を好む傾向があります。感情表現が乏しいことが特徴です。

統合失調型パーソナリティ障害 :
奇妙な思考や行動、魔術的思考を持ち、対人関係において問題を抱えることが多いです。

B群パーソナリティ障害(劇的で感情的な行動)
反社会性パーソナリティ障害 :
他者の権利を無視し、衝動的で攻撃的な行動を取ることが多いです。犯罪行為に結びつくこともあります。

境界性パーソナリティ障害 :
感情の不安定さ、自己像の不安定さ、対人関係の不安定さが特徴です。自傷行為や自殺企図が見られることがあります。
演技性パーソナリティ障害 :
注目を引くために誇張した感情表現を行い、他者の関心を引こうとする傾向があります。

自己愛性パーソナリティ障害 :
自己に対する過大評価と自己愛が強く、他者を軽視し、賞賛を求める傾向があります。
C群パーソナリティ障害(不安で恐怖的な行動)
回避性パーソナリティ障害 :
他者からの否定や批判を極度に恐れ、社会的な関係を避ける傾向があります。

依存性パーソナリティ障害 :
他者に対する過度な依存と服従が特徴で、自分で決定を下すことが困難です。

強迫性パーソナリティ障害 :
完璧主義で秩序や規則に固執し、柔軟性に欠ける傾向があります。

パーソナリティ障害の原因
パーソナリティ障害の原因は明確には解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因が関与していると考えられています。
遺伝的要因 :
家族に同じ障害を持つ人がいる場合、発症リスクが高まります。
環境的要因 :
幼少期の虐待やネグレクト、親との愛着関係の欠如が影響を与えることがあります。
生物学的要因 :
脳の発達や神経伝達物質の異常が関与している可能性があります。
診断
パーソナリティ障害の診断は、主に精神科医や心理士によって行われます。診断基準には、以下のような項目が含まれます:
- 長期間にわたる持続的な行動パターンの偏り。
- 社会的、職業的、対人関係における機能の障害。
- 他の精神疾患や薬物の影響によるものではないこと。
治療
パーソナリティ障害の治療は困難であり、長期的なアプローチが必要です。治療法には以下のものがあります:
心理療法 : 認知行動療法(CBT)や弁証法的行動療法(DBT)などが用いられます。
薬物療法 : 衝動性や不安を緩和するための薬物が使用されることがあります。
集団療法 : 同じ障害を持つ人々が集まり、グループでの治療が行われます。
家族療法 : 家族全体での治療が行われ、患者の行動パターンを改善するためのサポートが提供されます。
パーソナリティ障害を治療している医療機関はまだまだ少ないため、初診前にパーソナリティ障害の診察を受けられるかどうかを確かめましょう。
精神療法は1回のセッションに時間をかけるため、その多くが自由診療(健康保険適応外)です。受診料は医師の経歴にもよりますが大体1回1万円以上が相場です。
予防
パーソナリティ障害の予防には、幼少期の適切な育児と愛着関係の形成が重要です。
また、早期の介入と支援が発症リスクを低減する可能性があります。
治るためには
パーソナリティ障害を治すのは医師でもカウンセラーでも周囲の人々でもなく、自分自身です。
自分が抱えている問題や苦しさは誰のせいでもなく、自分にしか解消できません。
受け身の姿勢ではなく、自分で「治したい!」と強く決心するところから始まります。
ご自身で「これではいけない!」という気持ちが芽生えたときが治療のチャンスです。「自分がどうしたいのか」をよく考え気持ちをかためましょう。
回復を妨げる思い
パーソナリティ障害は自分の問題であるため自分にしか治せません。医師やカウンセラーにも治せません。そのため以下のことをご本人が知っておく必要があります。
他人のせいにする
自分が辛いのを周囲の人や母親のせいにして責めたててはいないでしょうか?
「育て方が悪かった」などと言うのはなんの解決にもなりません。
責任を他人に押しつけている限り、自分のするべきことは見えてきません。
誰かになんとかしてほしいと思う
辛いから助けてほしいと周囲にすがりつき、医師やカウンセラーに過剰な期待を寄せてしまいます。
心の問題はご本人以外の他人が治すことはできませんし解決することもできません。
医師やカウンセラーはあくまでも伴奏者にすぎません。
自分に向き合うことを恐れる
苦しさや問題をなんとかしたいと思いながらも、自分自身と向き合うことを避けているといつまでも問題は解決できません。
家族や周囲の人達の接し方
パーソナリティ障害は本人にしか治せません。
そのため医師やカウンセラーを含む周囲の人々はたとえ「助けたい」という善意からでも本人に関わりすぎないようにすることが大切です。
手を差し伸べることでかえって回復を妨げるため、本人は本人の課題に取り組み、周囲は本人との関係性を見直すなど各自がそれぞれ自分の問題に取り組みましょう。
まとめ
パーソナリティ障害は、個人の認知、感情、対人関係、衝動制御における持続的な偏りによって引き起こされる精神障害です。
遺伝的要因と環境的要因が関与しており、治療は困難ですが、心理療法や薬物療法、集団療法、家族療法などが行われます。
予防には、幼少期の適切な育児と早期の介入が重要です。