反社会性パーソナリティ障害(Antisocial Personality Disorder, ASPD)とは
反社会性パーソナリティ障害(Antisocial Personality Disorder, ASPD)は、社会の規則や規範を無視し、他人を傷つけたり騙したりすることに罪悪感を持たない人格障害の一つです。
ASPDの人々は、自己中心的で衝動的な行動を取り、他者の権利を無視する傾向があります。


症状と特徴
他者の軽視 :
他人の感情や権利を無視し、自分の利益や快楽を優先します。
衝動的行動 :
計画性がなく、衝動的に行動することが多いです。例えば、突然の転職やローンの未払いなどが挙げられます。
無責任性 :
社会的な責任を果たさず、仕事を安定して続けられない、経済的な義務を果たさないなどの行動が見られます。
良心の呵責の欠如 :
他人を傷つけたり騙したりしても罪悪感を感じず、何度も繰り返します。
原因
反社会性パーソナリティ障害の原因は複数あり、遺伝的要因と環境的要因が関与しています。
遺伝的要因 :
家族にASPDの人がいる場合、発症リスクが高まります。
ゲノムワイド関連解析(GWAS)では、6番染色体の6p21.2の部位に共通して異常が見られることが分かっています。
環境的要因 :
幼児期の虐待やネグレクト、親との愛着関係の欠如がASPDの発症に影響を与えます。
これにより、他者の痛みを理解する能力が育たず、反社会的行動を取るようになります。
診断
反社会性パーソナリティ障害の診断は、主に世界保健機関(WHO)の『ICD-10』やアメリカ精神医学会の『DSM-5』に基づいて行われます。診断基準には以下のような項目が含まれます:
・他人の権利を無視し侵害する広範な様式が15歳以降に見られること。
・法にかなった行動という点で社会的規範に適合しないこと。
・繰り返し嘘をつくこと、偽名を使うこと、自分の利益や快楽のために人をだますこと。
・一貫して無責任であること。
・良心の呵責の欠如。
治療
反社会性パーソナリティ障害の治療は困難であり、特定の治療法によって長期的に改善することは現在のところ確認されていません。
治療の目標は、患者が社会に適応できるように認知や行動パターンを改善することです。以下に主な治療法を挙げます:
カウンセリング療法 :
患者の認知や行動パターンを改善するためのカウンセリングが行われます。
薬物療法 :
衝動性や攻撃性の緩和を目的とした薬物療法が行われることがあります。
集団精神療法 :
同じ障害を持つ人々が集まり、グループで話をしたり共同作業を行うことで社会に適応できない原因を見つけて解決する方法です。
家族療法 :
患者本人と家族が一緒に適切な対処法を工夫することで、症状や問題行動の解決を図ります。
予防
反社会性パーソナリティ障害の予防には、幼児期の虐待やネグレクトを避けることが重要です。
また、規則が守れない子どもに対して一貫性のあるしつけや育児方針を持つことも予防に繋がります。
まとめ
反社会性パーソナリティ障害は、社会の規則や規範を無視し、他人を傷つけたり騙したりすることに罪悪感を持たない人格障害です。
遺伝的要因と環境的要因が発症に関与しており、治療は困難ですが、カウンセリング療法や薬物療法、集団精神療法、家族療法などが行われます。
予防には、幼児期の虐待やネグレクトを避け、一貫性のあるしつけや育児方針を持つことが重要です。

