摂食障害(拒食症/過食症)の脳科学的なメカニズム

摂食障害の脳科学的なメカニズムについて詳しく説明します。

目次

摂食障害とは

摂食障害とは、食事や体重、体型に対する極端な考え方や行動が特徴で、主に神経性無食欲症(拒食症)と神経性大食症(過食症)の2つの主要なタイプがあります。

これらの障害は、身体的・精神的に深刻な影響を及ぼすことがあります。

摂食行動の神経回路

摂食行動は、視床下部を中心とした神経ネットワークによって制御されています。

視床下部には、摂食行動を促進するニューロペプチドY(NPY)産生細胞と、摂食行動を抑制するプロオピオメラノコルチン(POMC)産生細胞が存在しています。

視床下部の役割

視床下部は、食欲を制御する中心部であり、摂食行動の開始と終止、1日の摂食量、短期的または長期的な体重変動を制御しています。

視床下部には、弓状核、室傍核、外側野などの神経核が含まれています。

弓状核 :

弓状核には、摂食行動を促進するNPY/AgRP神経細胞と、摂食行動を抑制するPOMC/CART神経細胞が存在します。

NPY/AgRP神経細胞は、空腹時に活性化し、摂食行動を促進します。

一方、POMC/CART神経細胞は、満腹時に活性化し、摂食行動を抑制します。

室傍核 :

室傍核は、摂食行動の調整に重要な役割を果たし、視床下部の他の領域と連携して摂食行動を制御します。

外側野 :

外側野は、空腹時に活性化し、摂食行動を促進します。

外側野の破壊は、摂食行動の減少を引き起こします。

神経伝達物質とホルモンの役割

摂食行動の制御には、さまざまな神経伝達物質とホルモンが関与しています。

セロトニン :

セロトニンは、摂食行動を抑制する役割を果たします。

セロトニンの低下は、過食行動を引き起こす可能性があります。

ドーパミン :

ドーパミンは、報酬系に関与し、食事の快感を増強します。

ドーパミンの異常は、摂食行動の異常を引き起こす可能性があります。

レプチン :

レプチンは、脂肪細胞から分泌され、視床下部に作用して食欲を抑制します。

レプチン抵抗性は、肥満や過食の原因となることがあります。

グレリン :

グレリンは、胃から分泌され、視床下部に作用して食欲を刺激します。

空腹時にグレリンの分泌が増加し、摂食行動を促進します。

摂食障害の脳科学的メカニズム

摂食障害の脳科学的メカニズムは複雑で、多くの要因が絡み合っています。

神経回路の異常

摂食障害の患者では、視床下部を中心とした神経回路の異常が観察されます。

特に、NPY/AgRP神経細胞とPOMC/CART神経細胞のバランスが崩れることが、摂食行動の異常を引き起こす要因となります。

神経伝達物質の異常

摂食障害の患者では、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の異常が観察されます。

これらの異常は、食欲や摂食行動に影響を与えることがあります。

ホルモンの異常

摂食障害の患者では、レプチンやグレリンなどのホルモンの異常が観察されます。

これらのホルモンの異常は、食欲や摂食行動に影響を与えることがあります。

摂食障害の治療

摂食障害の治療には、心理療法や薬物療法が用いられます。

心理療法 :

認知行動療法(CBT)は、摂食障害の治療に効果的です。

CBTは、否定的な思考パターンを変えることを目指します。

薬物療法 :

摂食障害に対する薬物療法として、抗うつ薬や抗不安薬が用いられることがあります。

ただし、これらの薬物は症状を緩和するものであり、根本的な治療ではありません。

栄養療法 :

栄養士の指導のもと、バランスの取れた食事を摂ることが重要です。

栄養療法は、身体的な健康を回復させるために必要です。

まとめ

摂食障害の脳科学的メカニズムは複雑であり、視床下部を中心とした神経回路、神経伝達物質、ホルモンの異常が関与しています。

治療には、心理療法、薬物療法、栄養療法が有効です。早期の発見と適切なサポートが重要です。

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