防衛機制の一つである「置き換え」について詳しく説明します。

置き換えの定義
置き換え(Displacement)は、感情や態度などを本来の対象ではなく、別の対象に向けて表現、発散する防衛機制です。
これは、元来の対象に対して感情を表現することが危険で不安を感じる場合に、より安全だと思われる別の対象に向けて感情を表出することを意味します。
置き換えの具体例
職場でのストレス :
- 例: 職場で上司に怒られた父親が、帰宅後にその鬱積を妻に向かって発散する。妻は子どもに向かって鬱積を発散し、子どもは飼い犬に向けてウサを晴らす。

これは本当にやってしまいがちです。
一番身近にいる大切な人やペットに対して発散してしまいがちです。
ですが、やり続けていると関係性は悪化します。
近しい仲だから何でも受け入れてもらえると思っているのかもしれませんが、それは「甘え」です。
「親しき仲にも礼儀あり」ですね。
浮気の発覚 :
- 例: パートナーの浮気が発覚した際に、怒りをパートナーに向けるのではなく、浮気相手に向ける。
フェティシズム :
- 例: 性欲の対象を人からモノに置き換える。
恐怖症 :
- 例: 過干渉な母親への不安を無意識のうちにクモに向け、異様にクモを怖がる。
置き換えのメカニズム
置き換えは、元来の感情の対象が権威を持つなどの理由でその感情を直接ぶつけると危険で不安を呼ぶために、危険でない対象に向けて発散することです。
これは、無意識のうちに行われることが多く、感情の発散先が変わることで一時的に安心感を得ることができます。



置き換えをされやすい方は、相手から無意識的に「置き換えをしてもいい相手」と思われている可能性があります。
その場合、勇気を持ってNO!と行動や言葉で伝える必要があります。
場合によっては相手としっかり境界線を引くことが大事です。
置き換えの社会的影響
置き換えは個人だけでなく、社会的にも観察されます。
例えば、社会的弱者や少数者のグループに対して向けられる理不尽な怒りや圧力は置き換えの場合が多いと考えられます。
また、新型コロナウィルス感染拡大に際しての「自粛警察」も置き換えの視点から理解することが可能です。




置き換えの心理的影響
置き換えは一時的に感情を発散する手段として有効ですが、長期的には問題を解決することにはなりません。
むしろ、感情の発散先が変わるだけで根本的な問題は解決されないため、ストレスや不安が蓄積される可能性があります。



人間関係などでうまくいっていない場合、置き換えの心理状態になりやすいです。
子どもやペットに発散先が変わることもあります。
置き換えの対処法
置き換えを防ぐためには、感情を適切に表現する方法を学ぶことが重要です。
例えば、カウンセリングや心理療法を通じて、自分の感情を理解し、適切な方法で表現するスキルを身につけることが有効です。



最初のカウンセリングは公認心理師や臨床心理士に行ってもらうのがいいと思います。
またご自身で心理学を学んでみるのもいいですね。
人間関係の悩みの大元を探ると、だいたい幼少期のご両親との関係性や家庭環境が影響しています。
まずはご自身でそのことを受け入れることが大切です。
置き換えの歴史的背景
置き換えの概念は、ジークムント・フロイトによって初めて提唱されました。
フロイトは、無意識の中で抑圧された感情が他の対象に向けられることで、個人が心理的な安定を保つことができると考えました。
彼の理論は、後に多くの心理学者によって発展され、現代の心理療法においても重要な概念として位置づけられています。
置き換えの種類
置き換えにはいくつかの種類があります。以下に代表的なものを挙げます。
感情の置き換え :
- 例: 怒りや悲しみなどの感情を、他の人や物に向けて発散する。



怒りや悲しみを他の人に向けて大々的に発散するのは極力控えたほうがいいですね。
特に身近にいる大切な人達に向けてばかりいるとやがて関係性が破綻してしまいます。
行動の置き換え :
- 例: ストレスを感じたときに、食べ物やアルコールに依存する。



これは私もついついやってしまいがちです。甘いものやジャンキーなものを食べ過ぎてしまったり…。
それだけストレスが溜まっているということなので、ストレスを減らすことも同時に考えなくてはですね。
思考の置き換え :
- 例: 不安な状況を避けるために、他のことに集中する。
置き換えの利点と欠点
置き換えには利点と欠点があります。以下にそれぞれを挙げます。
利点:
- 一時的な安心感を得ることができる。
- 感情を直接表現することが難しい場合に、代替手段として機能する。
欠点:
- 根本的な問題を解決することができない。
- 長期的にはストレスや不安が蓄積される可能性がある。
まとめ
置き換えは、感情や態度を本来の対象ではなく、別の対象に向けて表現、発散する防衛機制です。
これは、元来の対象に対して感情を表現することが危険で不安を感じる場合に、より安全だと思われる別の対象に向けて感情を表出することを意味します。
置き換えは一時的に感情を発散する手段として有効ですが、長期的には問題を解決することにはなりません。
むしろ、感情の発散先が変わるだけで根本的な問題は解決されないため、ストレスや不安が蓄積される可能性があります。
置き換えを防ぐためには、感情を適切に表現する方法を学ぶことが重要です。
例えば、カウンセリングや心理療法を通じて、自分の感情を理解し、適切な方法で表現するスキルを身につけることが有効です。

