人生の中で道に迷うことは何度もあります。特にコロナ禍で今後の自分の人生の方向性に迷われている方は多いのではないでしょうか?
心理学では、人間が人生の中で衝撃的な別れを体験するとき(死別や生別)数ヶ月〜数年かけて「悲嘆のプロセス」を経て新しい人生の方向性を見つけていくと言われております。
死別や生別・別離(家族・親族、配偶者、パートナー、子ども、ペット、友人など)
災害、事故、病気・死の宣告(自分や身近な人、大事な人も含む)キャリア(失職、転職、転勤など)、引っ越し、留学、家や所有物の紛失 など
ここでは「アルフォンス・デーケンの悲嘆の12段階モデル」の中の7段階である「空想形成・幻想」についてご説明していきます。
立ち直るまでの期間には個人差があり、必ずしもこのプロセス通り順番に進むとは限りませんし、全てのプロセスを体験するとも限りません。
また、専門家に頼ってグリーフケアを行う場合もあれば、ある程度であれば個人で行うことも可能です。
ですが無理をしてご自身だけで癒そうとすると症状が悪化してしまう場合も考えられますので、遠慮なく専門家を頼ることも大切です。
(初めて心理カウンセリングを受けられる場合は、公認心理師・臨床心理士のカウンセリングがおすすめです)

アルフォンス・デーケンは、ドイツ出身の哲学者です。
彼は「死生学」の専門家であり、「死への準備教育」の必要性を唱えました。
彼の提唱した悲嘆の12段階モデルは、主に大切な人との突然の死別に対する心の回復プロセスを示しています。
このモデルは、他の突然の喪失にも応用可能です。
空想形成・幻想の段階
デーケンの悲嘆の12段階モデルの中で、7段階目に位置するのが「空想形成・幻想」です。
この段階は、喪失を経験した人が現実を受け入れられず、故人がまだ生きているかのように思い込み、実生活でもそのように振る舞う段階です。
辛い喪失から立ち直る過程で、空想形成や内的な世界への逃避はよく見られる反応です。このタイミングでスピリチュアルな信念や宗教観に惹かれることも少なくありません。
なぜなら、スピリチュアルな信念や宗教観は、人生の不確実性や困難な状況に対する意味を見出す助けとなるからです。喪失の経験は、人生の意味や目的についての深い問いを引き起こすことがあり、その答えを求める過程で、スピリチュアルな教えや宗教の教義に魅力を感じることがあります。
このような信念や宗教観は、感情的な安定をもたらし支えとなることがあります。
例えば、失踪した家族を持つ人が、何年もその帰還を待ち続ける中で、祈りや瞑想、あるいはスピリチュアルな儀式に頼ることがあります。これらの活動は、心の平穏を保ち、耐え難い不確実性と向き合う助けとなるのです。
このように、喪失から立ち直る過程でスピリチュアルや宗教観に惹かれることは、自然な心理的反応の一部と言えるでしょう。

日本ではスピリチュアルや宗教観を否定される方も中にはいらっしゃいますが、何かしらの信仰をもつことは世界的に見れば普通のことです。
日本では多種多様な宗教施設が存在しているものの、普段から熱心に信仰されている方は限られているように見えます。
実は日本のほうが世界的にはイレギュラーともいえます。
空想形成・幻想の特徴
現実逃避 :
喪失を経験した人は、現実の苦しみから逃れるために、故人がまだ生きているかのように空想します。
これは、心の防衛機制として働き、現実の痛みを和らげる役割を果たします。


日常生活への影響 :
喪失を経験した人は、故人がまだ生きているかのように日常生活を続けます。
例えば、故人のために食事を準備したり、故人の部屋をそのままにしておくことがあります。
時間の停止感覚 :
喪失を経験した人は、故人が亡くなった瞬間から時間が止まったかのように感じることがあります。
このため、故人がまだ生きているかのように振る舞うことが続きます。
空想形成・幻想の心理的影響
空想形成・幻想は、喪失を経験した人に対して深刻な心理的影響を与えることがあります。以下にその影響を示します。
現実感の喪失 :
空想形成・幻想が続くと、喪失を経験した人は現実感を失い、現実と空想の区別がつかなくなることがあります。
社会的孤立 :
空想形成・幻想が強くなると、喪失を経験した人は他人との関わりを避けるようになります。これは、現実と向き合うことが苦痛になるためです。
心理的混乱 :
空想形成・幻想が続くと、喪失を経験した人は心理的に混乱し、日常生活に支障をきたすことがあります。
空想形成・幻想の克服方法
空想形成・幻想を克服するためには、以下のような方法が有効です。
現実の受容 :
喪失を経験した人が現実を受け入れることが重要です。
これは、故人が亡くなったという事実を認め、現実と向き合うことです。
専門家のサポート:
心理カウンセラーやセラピストのサポートを受けることが有効です。
専門家のサポートを受けることで、空想形成・幻想を軽減し、心の回復を促進することができます。
グリーフケア :
グリーフケアは、喪失を経験した人が悲しみを乗り越えるためのサポートを提供します。
これは、喪失を経験した人が自分の感情を表現し、共有する場を提供することです。
まとめ
アルフォンス・デーケンの悲嘆の12段階モデルの「空想形成・幻想」は、喪失を経験した人が現実を受け入れられず、故人がまだ生きているかのように思い込み、実生活でもそのように振る舞う段階です。
この段階は、喪失を経験した人に対して深刻な心理的影響を与えることがありますが、現実の受容や専門家のサポート、グリーフケアを通じて克服することが可能です。





